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最高裁判所第二小法廷 平成3年(あ)305号 決定 1991年7月16日

主文

本件上告を棄却する。

当審における未決勾留日数中三〇日を本刑に算入する。

理由

弁護人池本美郎の上告趣意のうち判例違反をいう点は、原判決は所論引用の判例と相反する法律判断をしていないから、所論は前提を欠き、その余は、事実誤認の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、記録によれば、被告人は、錯乱状態に陥っていて任意の尿の提出ができない状況にあったものと認められるのであって、本件被疑事実の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らせば、本件強制採尿は、犯罪の捜査上真にやむを得ない場合に実施されたものということができるから、右手続に違法はないとした原判断は正当である(最高裁昭和五四年(あ)第四二九号同五五年一〇月二三日第一小法廷決定・刑集三四巻五号三〇〇頁参照)。

よって、同法四一四条、三八六条一項三号、刑法二一条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 藤島昭 裁判官 中島敏次郎 裁判官 木崎良平 裁判官 大西勝也)

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